通勤列車連載3


   その耳の先の三角が、人より少し尖っているので、蝶の片羽みたいだった。その中心には確かに穴があり、彼は胃カメラするみたいに、きれいな耳の底が見える気がした。耳から入って、底は心臓のあたりだろうか。ちょうちょがきらきら光って見えて、そのまま齧り付きたくなった。あたたかいのに青白い彼女の、うなじに視線を移したとたん、ラ・カンパネラが落っこちた。膨よかで冷たい光の粒が、彼女の上に降 ってくるーーー。